東京鐵鋼健康保険組合 被扶養者認定基準取扱要領

1.はじめに

健康保険では、被保険者の家族が保険者から被扶養者として認定を受けることにより、疾病、負傷その他必要な給付を受けることができます。

しかし、本来認定しなくてもよい家族を被扶養者にしてしまうと、健保組合は支出しなくてもよい費用を負担することになり、保険料を納めている各事業主や多くの被保険者の迷惑になるほか、健康保険組合の財政悪化を招くことにも繋がります。そのため、被扶養者の取り扱いは公正を期することを目的として厳格に行います。

2.健康保険の被扶養者とは

被扶養者は、被保険者の家族であれば誰でもなれるものではなく、健康保険法や厚生労働省通知等で示されている一定の条件を満たす必要があります。

このため健保組合は、被保険者から申請された認定対象者を、それぞれの条件に基づき、社会通念上において妥当と判断される総合的な審査を実施し、被扶養者として認定するかどうかを決定しています。

なお、健康保険の被扶養者とは、加入者の勤務先の家族手当の支給対象や、所得税法上の扶養親族の対象と必ずしも一致するとは限りません。

3.被扶養者の認定要件(基本)※第3条

被扶養者の認定を受けるためには、次に掲げる全ての条件を満たす必要があります。

  1. 主として被保険者により生計を維持されていること。

  2. 健康保険法で定められた親族の範囲内であること。

  3. 原則、日本国内に住所(住民票)を有していること。

    ※国内に住民票がない海外在住の方でも特例的に要件を満たす場合、また国内に住民票があっても海外で就労している等により要件を満たさない場合があります。

  4. 被保険者には認定対象者を継続的に養う経済的扶養能力があること。

  5. 認定対象者に収入がある場合は、一定の収入要件を満たしていること。

  6. 被保険者の他に扶養義務者(※1)が存在しないか、他の扶養義務者より被保険者の生計維持程度が高い(※2)こと。

    ※1 他の扶養義務者・・・ 認定対象者が、子の場合は被保険者の「配偶者」、母の場合は「父」、弟妹の場合は「父母や兄姉」等。

    ※2 夫婦が共に働いて子供を扶養している場合は、原則として子どもの人数にかかわらず、収入が多い方の被扶養者となります〔夫婦共同扶養の取り扱い〕。

  7. 後期高齢者に該当していないこと。

4.被扶養者の範囲 ※第2条

被扶養者の範囲は、健康保険法で被保険者の3親等内の親族と定められており、被保険者と同一世帯に属していなくてもよい人と、同一世帯に属していることが条件の人がいます。

同一世帯に属しているとは、被保険者と住居および家計を共同することであり、同一戸籍内にあることや被保険者が世帯主であることは必ずしも必要ではありません。

健康保険での同一世帯とは住居および家計を共にする者の集まりのことであり、単なる同居や家計が異なる二世帯同居とは基本的に異なります。

同一世帯に属していなくてもよい人

  1. 配偶者(内縁関係を含む)
  2. 子(養子を含む)、孫
  3. 兄、姉、弟、妹
  4. 父母(養父母を含む)等の直系尊属

同一世帯に属していることが条件の人

  1. 被保険者の配偶者(内縁関係を含む)の父母、連れ子
  2. 被保険者の配偶者(内縁関係を含む)死亡後のその父母、連れ子

被扶養者として認定可能な3親等内の親族(被扶養者の範囲図)

三親等図.png

※枠は親等数を表わします。

5.生計維持関係 ※第5条

被扶養者として認定されるには、主として被保険者により生計を維持されていることが必要です。

主として被保険者により生計を維持されている状況とは、被扶養者が生活のために支出する費用(食費・住居費・光熱費等を含み、預貯金は除く)の半分以上を、被保険者の収入によって賄われている状態をいい、経済的扶養事実が将来にわたって継続していることが基本となります。

そのうえで、次の条件を満たしている状態を一般的に該当するものと考えます。

認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合

認定対象者の年間収入が130 万円未満(認定対象者が60 歳以上または障害厚生年金受給者等の場合は180 万円未満)であり、かつ、被保険者の年間収入の2 分の1 未満であること。

認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合

認定対象者の年間収入が130 万円未満(認定対象者が60 歳以上または障害厚生年金受給者等の場合は180 万円未満)であり、かつ、被保険者の援助による送金額(仕送り)より少ないこと。

6.16歳以上60歳未満の認定対象者 ※第5条

健康保険における主な被扶養者は、配偶者・16歳未満の子及び孫・60歳以上の父母等ならびに障害者とされています。これは16歳以上60歳未満の認定対象者は、通常労働能力があり、自ら収入を得ることができる為、被保険者の経済的援助がなくても自立して生活できる場合が多くみられるとの考え方からです。

そのため、被保険者は認定対象者の収入や扶養状況が確認できる書類を提出し、被保険者が生計費の半分以上を援助しなくてはならない状態にあると証明することが必要となります。また、健保組合は特に生計維持関係を厳格に審査し、それを確認したうえで認定を行うべきとされています。

ただし当健保組合では、原則として18歳未満の学生にかかる収入確認は省略しています。

7.被扶養者の収入 ※第4条

認定対象者に収入がある場合は、次に掲げる収入の範囲や限度額に照らして、収入要件を満たしているかを判断します。

なお、被扶養者における収入とは、税法上の所得額ではなく、税金等控除前の総収入を基本とします。また複数の収入を得ている場合はその合算額を確認します。

収入の範囲

一時的な収入(退職金・株式売却益・遺産相続・出産育児一時金、宝くじの当選金等)を除き、継続的なものはすべて収入と判断します。

  1. 給与・賞与(通勤手当も含めた、税金等控除前の総支給額)
  2. 各種年金(国民年金・厚生年金・企業年金・個人年金・共済年金・障害年金・遺族年金・各種恩給・労災年金等、介護保険料等控除前の総支給額)
  3. 不動産収入(土地・家屋・駐車場等の賃貸収入)
  4. 利子・投資収入(預貯金利子・有価証券利子・株式配当金等)
  5. 被保険者以外からの仕送り(生活費・養育費等)
  6. 各種給付金(雇用保険(失業給付)、傷病手当金・出産手当金、育児休業給付金等)
  7. 自営業・第一次産業(農業・漁業など)の収入
  8. その他、継続性のある収入(譲渡収入・遺産相続の分割収入等)

被扶養者の収入要件(限度額)

収入要件の基本

認定対象者の年齢収入限度額
60歳未満年額130万円未満
60歳以上
60歳未満の障害厚生年金受給者等
年額180万円未満

給与収入がある場合の収入限度額

1カ月の平均給与額が、次の限度額内であること。

認定対象者の年齢収入限度額
60歳未満
(年額130万円÷12カ月)
月額108,334円未満
60歳以上
60歳未満の障害厚生年金受給者等
(年額180万円÷12カ月)
月額150,000円未満

各種給付金等を受給の場合の収入限度額

各種給付金の日額が、次の限度額内であることが必要です。

認定対象者の年齢収入限度額
60歳未満
(年額130万円÷12カ月÷30日)
日額3,612円未満
60歳以上
60歳未満の障害厚生年金受給者等
(年額180万円÷12カ月÷30日)
日額5,000円未満

※上記いずれの場合も、被保険者の年間収入の2分の1未満であることを要します。

8.収入の算出方法と注意点 ※第4条

年間収入とは、過去における収入のことではなく、被扶養者に該当する時点及び認定された日

以降の年間見込み収入のことをいいます。具体的な年間収入の算出方法は以下のとおりです。

年間収入算出のイメージ

  1. 給与収入(※1) = (直近3 カ月に受けた給与の平均額×12 カ月)+(賞与・一時金等×支給回数)
  2. 雇用保険の失業給付 = 給付日額×30 日×12 カ月にて換算
  3. 各種年金収入 = 介護保険料及び税金控除前の支給金額
  4. 事業収入 = 総収入􀊷当健保組合が認める必要最低限の経費
  5. 健康保険の傷病手当金、出産手当金 = 給付日額×30 日×12 カ月にて換算
  6. 労災保険の休業(補償)給付 = 給付日額×30 日×12 カ月にて換算
  7. 利子・配当収入(※2) = 税金控除前の総収入
  8. その他継続性のある収入 = 税金控除前の総収入

※1給与、賞与・一時金等のいずれも税金等控除前の総収入で判断します(交通費を含む)。

※2原則として、不動産譲渡収入、退職金等は一時的な収入とし、被扶養者の認定にかかる収入とはみなしませんが、毎月分割で受け取る等、継続的要素が発生する場合は収入とみなします。

※3自営業者の方は、収入算出方法に従い収入を判 断します。

9.送金(仕送り)基準額 ※第5条、第9条

認定対象者が別居している場合は、被保険者からの送金(仕送り)が、認定対象者の収入以上で、基準を満たしているか総合的観点から判断します。また、送金方法は、金融機関を利用した振り込みや現金書留等によってその事実が確認できることとし、原則として毎月定期的かつ継続的に送金(仕送り)していることが必要です(一括送金、現金手渡しは認められません)。

 但し、認定対象者が学生の場合は、学生であることの証明書(学生証のコピー、在学証明書等)を提出することで、送金や仕送り額の事実確認は省略できます。

10.送金(仕送り)の確認を省略できる場合 ※第5条、第9条

単身赴任や⾧期出張による別居

※単身赴任とは、被保険者が自宅から通勤できない地域への転勤を命じられたために、家族と離れてやむを得ず一人で生活している状態のことを指します。

※上記の他、これまで同居していた家族が⾧期入院等の理由により、やむを得ず別居するときは、同居の延⾧として考えることで、送金の確認を省略します。

11.被扶養者の認定日 ※第7条

原則として、健保組合が被扶養者の認定要件を満たしていると認めた日が「認定日」となりま す。

通常、「保険」の考え方から過去にさかのぼった資格の付与はできませんが、確認書類を取り寄せる時間等を考慮したうえで、総合的観点から審査を行い、認定日を決定します。

例)被保険者の資格取得日、被扶養者の出生日・失業給付受給終了日の翌日・退職日の翌日

12.被扶養者の削除日 ※第8条

原則として、被扶養者の認定要件を満たさなくなった日が「削除日」となります。

扶養の事実がないにもかかわらず、速やかに届け出をしなかった場合は、さかのぼって資格を削除し、すでに当該期間中に保険診療や給付金、健診等の補助金を受けていたときは当健保組合が負担した医療費や給付金、補助金等を返還しなくてはなりません。

例)就職日・失業給付受給開始日・年金受給開始日(支給対象日)・死亡の翌日

13.被扶養者認定後の再確認(検認) ※第9条

健康保険法施行規則第50条及び厚生労働省通知等により、健康保険組合は、認定後も扶養状況の確認を行うことになっています。令和6年度より、マイナンバー制度における「情報連携」で前年の収入を照会する審査を始めました。認定審査の際、情報連携で被扶養者資格の適否について判断が難しい場合には、書類の提出を求めることがあります。提出書類を依頼後、指定期日を過ぎても提出がない場合には、被扶養者の資格を取り消す場合があるため、給与明細書や送金(仕送り)等の確認書類はいつでも提出できるように準備していただくことが必要です。

14.虚偽の申請による罰則 ※第9条、第10条

虚偽の申請により、扶養の事実のない親族の認定を受けたことが判明した場合は、被扶養者の資格はさかのぼって取り消され、すでに当該期間中に保険診療や給付金、健診等の補助金を受けていたときは、当健保組合が負担した医療費や給付金、補助金等を返還しなくてはなりません。

15.その他 ※第5条、第6条

  1. 取得・喪失に必要とする書類例
  • 住民票、戸籍謄本等の続柄・旧姓を確認する公的機関の証明書
  • 各健康保険の資格喪失証明書
  • 雇用保険給付に関する書類(給付決定通知、受給期間満了等)
  • 年金給付、障害年金給付等の公的年金受給に関する書類
  • 給与明細、確定申告書類等、事業主の発行する給与支払証明等の収入を確認する書類
  • 保険者間協議に関する書類(同意書、資格取得・喪失同意書等)
  • 加入先の健康保険証
  1. 本基準に定めのない事例は、内容を詳細に調査し、その具体的事情に照らして、社会通念上最も妥当と認められる認定を行います。

令和4年8月1日から適用

令和7年4月1日 改正